第1話  妄想が健やかに あなたを救う

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よりにもよってマスターは出たばかりだし、絶体絶命じゃないですか! 「オレはなぁ、もう10人殺ってんだよ。あと1人増えたところで何も変わんねえ……」 アワワワ、完全に目つきがヤバイですよぉ。 こうして為す術もなく、無残にも私は殺されてしまうのでした。 お父さんお母さんごめんなさい。 最後の仕事が妄想でごめんなさい。 せめて来世は、すっごく強い剣士にでも生まれ変われますように。 剣士に、誰よりも強い剣士に……。  ◆ 『くっ、この女強ぇぞ!』 『囲め囲め! サシでやりあうな、数で押し潰せ!』 『フッ、愚かな』 『ぐわああ! 化け物だぁ!』 『おい、お前ら!逃げるんじゃない!』 『我が聖剣は、悪には決して屈さぬ。非道のものどもめ、覚悟しろ!』  ◆ 「おい、聞いてんのかよ!」 「なんだ。まだ生き残りがいたのか」 「え、何だコイツ。急に雰囲気が……」 「逃げれば死なずに済んだものを。我が聖剣の前に塵となるがよい」 「いや、どう見てもそれホウキ」 恐怖のせいだろうか、目の前の男が不可思議な事を言いだした。 呆然と口を開いたままで、何とも間抜け面だ。 彼我の戦力差のわからん生き物は哀れなものだ。 子犬でさえそれくらいは弁えているというのに。 「愚かな悪党よ。我が竜王剣の力、とくと味わうが良い!」     
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