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「あああっ!」
今度は何者かの頓狂な叫び声が、道の反対側から聞こえてきたのだ。
「んん?」
その声に思わずそちらを覗うと、そこにはキュイレッサー・アーマーの上に白い修道士のようなフード付きサーコートを着た、丸坊主で髭面の中年男が驚いたような面持ちで立っていた。
大きく見開かれた右目に対して左目は妙に小さく、どこかひしゃげた感のある特異な顔立ちだ。
パッと見、遠方へ布教に向かう宣教師のような風貌ではあるが、その腰には剣を佩き、むしろ遠征へ赴く宗教騎士団といった様相である。
また、彼の後にも同じく当世風の鎧にモリオン、白いサーコートを着た兵士が三名ほど、こちらを睨んで控えている。
「ゲっ…!」
「やば…!」
彼らを目にしたリュカとサウロは、あからさまに嫌な感情をその歪めた眉間で表現する。
「その時代錯誤な甲冑姿、そして盾に描かれた〝風車〟の紋章……間違いない。きさま、〝禁書の秘鍵団〟が一員、〝百刃の騎士〟の名で知られるドン・キホルテスであろう?」
そんな二人の反応に気付いているのかいないのか? 宣教師風の男の視線は真っ直ぐにキホルテスの鎧の上へと注がれ、彼の顔をビシっと指さして声も高らかに問い質す。
「おぬし、どこかでその顔見たような……うむ。騎士たる者、問われて名乗らねば恥となろう。いかにも。それがし、もとエルドラニアはラマーニャ領の騎士、ドン・キホルテス・アルフォンソ・デ・ラマーニャでござる!」
その問いに、キホルテスは宣教師の顔をまじまじと見つめながら、なんら包み隠す素振りもなく、バカ正直にそう答えた。
「ば、バカ野郎っ! なに正直にフルネーム名乗ってんだよ!」
「旦那さまはほんとにおバカさんですか!」
まるで予想だにしなかった彼の信じ難き返答に、リュカとサウロは驚きと呆れに目を真ん丸くして同時にツッコミを入れる。
宣教師の顔よりも何よりも、そのサーコートの胸に描かれたプロフェシア教のシンボル――見開かれた一つ目から降り注ぐ光=〝神の眼差し〟と、それを左右から挟む巻角の紋章には見憶えがある……
というより忘れたくても忘れられないくらい、三人はそれをよーく見知っている。
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