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1. シンデレラ
本の世界に行く時、体や精神が侵食されないよう特殊な方法を取る。体にピタリとくっついたスーツを着込み、図書館に収められた対象の本を開く。そして長ったらしい呪文……詠唱というが、それを唱えて本の世界に入っていく。ゲームではたった三文で終わる工程も、実際に体験すると大層長く感じる。そもそも俺はこの詠唱を覚えていない。だってゲーム内では勝手に言ってくれるし。言わなくても話は進むし。
本の前でモタモタしている俺をジッと冷たい目で睨んでくるアンデルセンのことは無視するとして、正直まだ自分が本の世界でやっていけるとは思っていなかった。だって俺は本当にその辺にいるただの会社員で、変わっていることといえば名前が少々偉そうだということくらいだ。
「お前なぁ、そんなクソみたいな詠唱でエディットできると思っているのか」
「そんなこと言われても……! こっちは素人なんすよ!」
「百も承知だ。だとしてももっとあるだろう。なんだその汚い音痴みたいな歌は」
「くそっ、言いたい放題言いやがって!」
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