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硬い地面に足がつく。転ばないように力を入れると、ずしりと重力が身体中にかかってきた。眩しかった光が少しずつ薄れていき、ようやく目を開くことができた。
「こ、ここが『シンデレラ』の世界?」
「そのようです。チーフ、その本を開いてください」
「あ、これか」
言われた通り、手にしていた書物を開く。タイトルはもちろん『シンデレラ』で、エディットする際に手渡されたものだ。分厚い表紙をめくる。そういえば俺はこのお話を幼い頃、絵本で読んだきりだな。それもそうだ、大人になって童話なんて、読むこともない。
出だしは一体どんなだっただろうかと思い、一ページ目を見て。
それから、絶句した。
「白紙……!?」
「やはり。博士、聞こえますか。通信はつながっていますか」
動揺する俺をよそに、エリナは通信用の機器に話しかけていた。ザザ、とノイズが響く。その音を聞きながら、俺は必死に頭の中を整理しようとした。
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