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軽い絶望に押し潰されそうになった時、図書館の入り口から明るい声が響いた。静かな泉に波紋が広がったかのように、その声は美しく広がる。肩まで綺麗に切り揃えられた髪がふわりとなびく。俺と同じようにきちんと戦闘用スーツを着込んだエリナは、膝までのスカートを翻しながらこちらに走り寄ってきた。
安心してホッとため息をついたところで、アンデルセンは今度こそ大きな音で舌打ちをした。眉間に寄った皺がますます深くなる。それを無視してエリナに駆け寄ると、突然俺の眼の前で立ち止まって?を赤く染めた。あ、そうか。まだ俺たち初対面だもんな。いきなり再会のハグなんておかしいよな。
あれ、そういえば今目の前にいるエリナは髪が短いな。VRで見た時は確か腰まであったはずなのに。ということは俺たちは「初めまして」ということになるのか? でもさっき、俺のことを見て「先輩」って言っていた。ん? どういうことだ。俺はエリナのことを知っているのは(ゲームをしているから)当然だとして、エリナは知るはずがない。どうして、俺のことを。
「あ、あの。先輩……」
「えっと、何?」
白いブラウスの上にカチッとした紺色のジャケットを羽織り、それと同じ色をした膝までのスカートからは黒いタイツに包まれた足が伸びている。俺たち「編集者」の正装であり、戦闘用のスーツでもあった。それらを身につけたエリナはどこからどう見てもゲームに出てくる立ち絵そっくりで、その姿を見てようやく俺は肩に力が入っていたことに気がついた。
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