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モノクル越しに、榛色の瞳がじっとこちらを見つめていた。そこには気だるげな様子も悲観的な色も見当たらない。ただ、その瞳はかすかに残された希望を見つめていた。
「俺がお前に命じることは、ただ一つだ。物語を編集することが最優先じゃあない。いいか、イエヤス。よく覚えておけ。その穴だらけのチーズみたいな脳みそにちゃんと刻んでおけ」
「……アンデルセン」
その言葉を、俺は知っている。最初は何を言っているかよくわからなかった。だって、編集者は物語を編集するために本の世界に行く。だというのに彼は。それよりも大切なことがあると、いつも言っていた。
「死ぬな。何があっても。エリナと一緒に必ず生き抜け。これがこのエディットの第一目的だ」
その言葉に、深く頷く。ああ、そうだ。俺たちは必ず生きて帰る。無茶をしてどちらかが死んでしまったらエディットどころかこの世界はただ崩壊めがけて進んでいくしかなくなる。確かに刻一刻とタイムリミットは迫っているけれど、それでも焦ってことを仕損じてしまうよりは慎重に進めたほうがいい。
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