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力強い声だ。高すぎず、かといって低すぎない。耳に心地よい声だ。ゲームだったらここはボイスが付いていない。ただ荘厳なBGMが流れるだけだった。今はそんな音楽は流れていない。それでもアンデルセンの声が俺を勇気付けてくれた。
「Paint the scene I describe……」
自然なほど滑らかに、その詠唱は溢れてきた。ふわりと足が浮き上がった感じがした。指先から徐々に溶けていって、そのままどこかに消えてしまいそうだ。それでも俺が意識を繋いでいられるのは、すぐ隣にエリナがいるからだ。
どうして俺だったのか。なんで呼んだのか。そして、何が目的なのか。知りたいことはたくさんある。でも今は多分、隣にいてくれるだけでいい。何にもできない俺が、前を向いて歩めるのは彼女がいてくれるからだ。だから俺は。彼女を信じて進めばいい。
「And you will have yourself a picture book beyond compare.」
詠唱を唱え終わる。その瞬間、目の前が真っ白になった。ぎゅっと目を閉じても光は痛いくらいに瞼に刺さる。うわ、これがエディット。すごい、なにこれ。動画撮ってツイッターにアップしたいな。絶対フォロワー数増える。いやでもたぶん俺のケータイがこの環境に耐えられないだろうな。くそ、もったいない。
「先輩」
「へっ?」
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