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その中を中野と夕季が並んで歩くと、常連の観客が中野に声を掛けてきていた。
「アヤちゃん!」
中野「どうも、シバさん、いつもの席?」
「もちろん!」
中野「後で行くね!」
「こんばんは、アヤカちゃん」
中野「あ、タカダさん、今日早いね。」
「今日は山場のゲームだからな、店、早めに閉めちゃったよ。」
中野「またあ、奥さんに怒られるよ、後で行くね!」
「よろしく!」
夕季「うらやましい。」
中野「何が?」
夕季「通り過ぎただけで、あれだけ声掛けられるんだもんね・・・」
中野「だから、あんたもこれくらい頑張りなっつってんの、それより、どうする?」
夕季「合コン?」
中野「来る?」
夕季「何かなあ、私、野球知らないし・・・」
中野「そこなんだよ、何で野球知らない娘が、球場で売り子やってんだろうか・・・」
夕季「悪い?」
中野「プロ野球知らないと、お客さんと盛り上がらないでしょ、」
夕季「ルールが難しくてよくわかんない、」
中野「それで、よくこの仕事やろうと思ったね・・・」
夕季「別に、ビール売る仕事だから、野球関係ないし、」
中野「でも、野球知らない方が、向こうの食いつき良いらしいよ!」
夕季「食いつきって・・・」
中野「それに、今日はあの二ツ川が来るんだって!」
夕季「誰それ?」
中野「へ?何で知らないの?ここ、横浜球場のホームチーム、『横浜ブルーライツ』の若手有望株だよ?」
夕季「ごめん、知らない。」
中野「将来、三冠王取っちゃうかもしれない、って言われてるスラッガーだよ!」
夕季「サンカンオウ、って何?」
中野「はあ、とにかく来てよ。お願い、上手くいけば飲み代タダだからさあ、ね?」
夕季「わかった、参加する。」
中野「よし!今日試合終わったら、職員出口の受付辺りで集合ね!」
夕季「うん。」
中野「じゃあ解散!」
中野は夕着の肩をバンっと叩いて、通用口から観客席の方へ向かって行った。
夕季はしばらくコンコースを歩き、外野方面に向かった。
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