第1章

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「そんなことをはどうでもいいの。もう、あなたが聞いてくれないから、こちらから言うわね。 私ね、あの夜、山口先生のお宅に泊まったのよ。 山口先生、とても良くしてくださって…今度お礼に行かなくちゃって思っているの。 あなた、一緒に行ってくださる?」 他の先生に聞こえないように声を潜めて話始める高橋先生の顔は嬉しいとも苦しいとも取れるような微妙な顔をしている。 いったい何があったのだろう。 ちょっとだけ興味が湧くけど、それだけだ。こっちはそれ以上の出来事で胸が一杯なのだから… 「良かったですね、高橋先生。お宅に行くならお一人で行かれた方がいいですよ。私はお邪魔虫になるのは嫌です。」 「私だって一人で行きたいのよ。だけど山口先生はあなたと二人じゃないと入れてくださらないから…。」 「え?金曜は一人で泊まったのにですか?」 山口先生のお宅に泊まれたのに、高橋先生は浮かない顔だ。 私が高村くんと過ごした時間とは多分程遠いのではないか? 色恋ではない事情なのだろうと想像できてしまった。 「そ、それは、いろいろ事情があったんです。」 「どんな事情です?」 「掘り下げないの。で、行ってださるの?行かないの?」 「考えさせてください。」
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