5人が本棚に入れています
本棚に追加
「そんなに考えることかしら?ま、いいわ。明日にはお返事くださる?」
「はい、なるべく…。」
気が乗らない。行くなら一人で行って欲しい。
山口先生は落ち着いた大人って感じだけれと、酔っ払って私に好意を持ってるようなことを言ってた。
どこまで本気が分からないけれど、高村くんに誤解されるようなことはしたくないから、近づきたくない。
どうやって断ろう
明日までに何か理由をこじつけて断らなくちゃ。
それにしてもあんなに一人では家に入れないと言ってたのに、何があったのだろう。
ちょっと興味はあるけど、敢えて山口先生にきくほどのことではない。
聞いて高橋先生に恨まれたら面倒だし…。
人のことより目の前の仕事だ。
油断するとすぐ二人で過ごした濃密な時間が蘇り、顔が赤くなったり上の空になってしまう。
それでなくても意識を現実に留めることに苦労しているのに、人の世話を焼いてる場合じゃないのだ。
朝のホームルームを終えて教員室に戻る。
今日の授業は二時間目からだから、提出物のチェックをすることにした。
きを引き締めようと、口をキュッと結んでプリントの採点をしていると、後ろから声をかけられた。
「浅井先生も月曜は二時間目からですか?」
振り返ると山口先生の穏やかな笑顔。
「そうなんです。山口先生もですか?」
「ええ、奇遇ですね。」
奇遇?たぶんいつもそうだったのに今まで気づかなかっただけなのに、大袈裟だなと心の中で苦笑する。
最初のコメントを投稿しよう!