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「金曜のこと、高橋先生から聞きました?」
「ああ、少しだけ聞きました。山口先生の所に泊まったって。」
単純作業だから話しながらでも手は動かせる。視線は手元を見ながら、返事をするから、山口先生がどんな顔で話しているのか分からない。
「そうなんですよ。高橋先生、飲みすぎて途中で管を巻き始めたんですよ。お開きにして家まで送ろうとしたんですが…。」
山口先生のトーンを落とした声色で、相当面倒な状態だったんだろうと想像できた。
「もしかして寝ちゃったとか?」
「寝たことは寝たんですけどね、その前が大変でした。
気持ち悪いが始まって、次はゲロ。吐き終わったら歩けないって言い始めたんですよ。」
「うわっ最悪。」
思わず手を止めて山口先生をみると、心底嫌そうな顔を向けていた。
「しょうがないからオブったら、背中で何度もゲロ吐きそうになって下ろしてるうちに終電逃しちゃって…
タクシーもなかなか捕まらない。やっとタクシーに乗った頃には高橋先生が眠ってて、
揺すっても呼んでも起きないんです。
仕方ないから家に連れて帰って寝かしたんですよ。」
「大変でしたね!だから一人は入れないって言ってたのに、家に泊めたんですね。」
ため息を吐きながら頷く山口先生。高橋先生の朝の微妙な顔を思い出した。
山口先生を好きな高橋先生がその状況で朝目覚めたときの気持ちが予想できて、同情の気持ちが湧いてきた。同時に山口先生に対してもだ。
どんなに、気まずい朝だったのだろう?
その頃私は不動産屋に向かっていたんだ。その後、あんな展開になるなんで、誰が予想できるだろう。
また二人の熱い時間を思い出して、多分誰も見ていないのに赤面して俯いた。
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