第1章

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「いえ、そんなこと僕の口からは言えません。 浅井先生のリア充なのは分かりました。けれど、僕は全然気にしません。寧ろやる気が出てきました。ハードルが高ければ高いほど、燃えるんです。」 山口先生の熱のこもった視線を向けられて、書類を落としそうになった。 「オッと!」 手から落ちそうな書類を、大きな両手が私の左手ごと抑え、辛うじて落ちるのを免れた。 「あ、ありがとうございます。」 お礼を言って山口先生の手から逃れようとするけれど、しっかり手を抑えられていて離れない。 山口先生の長いきれいな指が私の手を撫でる。 不覚にもドキンと心臓が跳ねる。 「や、山口先生、もう大丈夫ですから…」 「浅井先生の手、細くてしなやかで触り心地がいいですね。」 嫌だ! 私の触れたいのは高村くんの手だけ この手は触れてはいけない手だ。
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