第1章

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二人の距離が近過ぎて激しい動悸で息が苦しくなる。 急いで靴を脱いで、酸素を求めるように明るい光の方へ向かった。 同じ間取りの部屋に、同じように配置された家具 落ち着く空間だ。 6年前は無かったテレビがローチェストの上に乗っていた。 「紅茶を入れるから、座椅子かベッドに座ってて。」 ミニキッチンから感情の読めない声が聞こえて、座椅子に腰を下ろした。 ベランダには先ほど見えていたカッターシャツと、下からは見えなかった下着やタオルが風で揺れている。 6年前の初めてここに来たときのことを思い出した。 あの時の高村くんは風邪をひいていて、心細そうだった。 あの時と変わらないベッド 風邪を引いて辛いのに私を押し倒したんだ。あの頃から高村くんはしっかり私の心に居座ってた。 部屋を見渡すと、女性の存在を確認できるようなものは無かった。 座椅子に座り緊張しながら待っていると、両手にマグカップを持って高村くんが入ってきた。 懐かしい fall inLOVEのマグカップに胸が熱くなる。 「どうぞ。」 テーブルのこちら側にワインカラーのカップを置いて、ブルーのカップを持ってベッドに座った。
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