第1章

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この6年間求め続けた温もりに頬づりしたくなる。 「夕貴、好きなんだ。」 「うん。」 欲しかった言葉が聞けて、嬉しくて頷くしかできなかった。 もう昨日の女性のことも今はどうでもよく感じて、ただただこの温もりに包まれていたいと思う。 こんなに好きだったんだとまた実感して、触れられてることが嬉しくてまた泣けてくる。 そのままどれくらい時間が経ったんだろう。 「座ろっか?」 「うん。」 座椅子じゃなくベッドに導かれ、二人で並んで座った。 泣いたあとでなんだか気恥ずかしくて、それを誤魔化すようにテーブルからマグカップを取って一口飲んだ。 既に温くなった紅茶が心地よく喉を潤した。 「昨夜の人は誰?」 「え?」 昨夜は高村くんの方が女性を抱き抱えるように擦れ違ったのに、逆に質問されて面食らった。 隣を見上げると、真剣な眼差しで私の言葉を待っている。
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