一章 望降ち

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 差出された札を受け取ろうとしたら、ひょいと避けられてしまった。悔しいのと申し訳ないのが半々くらいの顔で、ごにょごにょと口の中で何か言っている。渡す気がない物を受け取る必要はないと判断して、僕は彼を放って入り口へ向かって歩き出した。 「送ってくれてありがとう。じゃあ、夜にな」 「え?草町!?ちょ、待って……え、夜?」 「待つって言っただろう。向こうを出る頃メールする」 「……!」  図書館に入る直前、軽く振り返ったら小野の顔がまさに茹蛸で少し笑った。
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