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「草町が、好きだよ」
「、僕は」
「オレのになってって言ったけど、答えが“イエス”でなくてもいいよ。百夜通ってもやっぱり友達だったならそれでいい。オレはずっと草町の友達でいる。ただ……オレの気持ちを知っていてほしい。……ワガママで、ごめんな」
小野が笑う。口ではごめんと言っているのに、申し訳ないというよりは悲しそうに、泣くのを我慢しているように見えた。
受け入れなくてもいい、知ってくれるだけでいいと言うくせに、瞳からのぞく心が突き放さないでとぐずっている。泣きそうな顔で笑うなと怒鳴りつけたい。
“友達”でいると言ったけれど、彼は拒絶されても無邪気に近寄って行ける程に図太い人間だっただろうか。ぎこちなく笑って、少しずつ離れていく様が見えるようだ。ひどい脅迫があったものである。
友達に好きだと言われて、バッサリ切って捨てることもできなくて。
「本当に、わがまま……」
泣きたいのは、僕の方だ。
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