三十路女の憂鬱

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三十路女の憂鬱

「天宮チーフ、この間の企画進めて大丈夫ですか?」 「あ、うん。上には通ったからプロモーションの準備よろしくね。」 ……チーフ……かぁ。 仕事ばかりの日々が過ぎ、いつの間にか私はそんな役職に就いていた。 某有名化粧品会社に就職して十数年、美容の前線から抜擢されて本社勤務になりあれよあれよという間に広報室チーム長。 気が付けば30代に足を踏み入れ、若くて綺麗な子が多い広報室では完全にお局状態だった。 憧れた先輩や、慕ってくれた後輩達の寿退社を見送るばかりの完全なる出遅れ感。 まだ大丈夫と慰めてくれる人もいたけど、正直もう結婚に希望も願望もない諦め状態だった。 開き直った女は強いとか言うけど、まさに私はそれ。 別に寂しいことも、ツライこともないし日々忙しい仕事も充実している。 自分に自由にお金を使える独身貴族の良さを味わうと、結婚の必要性すら分からなくなってくる始末。 完全にこじらせている、良くないゾーンに突入したのを実感していた。 何も変化のない平凡な毎日は、仕事しか取り柄のない平凡な私にはぴったりで。 日々の生活も、社会的にも精神的にも安定していた私は、恋人なんかいなくても全然1人で生きていける気がしていた。 それはどんなことがあっても、変わらずに…。
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