三十路女の憂鬱

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「マスター、もう一杯!!」 「陽奈多(ひなた)ちゃん、今日飲みすぎ。もうやめときなよ。」 いつもは冷静なクール女と呼ばれる私も今日ばかりは荒れていた。 表参道にある行きつけのBAR。 ついこの間までは仕事が出来るか、稼いで自分投資が出来るかに重きが置かれていたのに、気がつくと”結婚”という二文字を経験しているかいないかが重要で。 女達のマウンティングが始まれば、彼氏がいないだけで「やばいよ。」と一気に叩かれる。 だから、群れずに1人気ままにここで静かに飲むのが好きだった。 お洒落で洗練された街にある、一見さん御断りの隠れ家的な素敵な場所。 仕事ばかりの私にとってこのお店に通う事が、今まで自分が積み上げてきたステータスの一つのようで、ここに来ることである種の満足感のようなものを感じていた。 ただ、そんな大切な場所でこんなに酔っ払うのは初めてのことで……。 「一体何事?どうしちゃったの、陽奈多ちゃんがこんなに酔うなんて……。」 強くて美味しいお酒を出して!と自分から注文したのにも関わらず、いつも仲良くしてくれるマスターも引くほどに酔っていた。
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