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新たな憂鬱
あれから、特に何か変化があったわけでもなく相変わらず仕事に忙しい毎日を送っていた。
まだ夏が始まったばかりだというのに、クリスマス商戦に向けて広報室は大忙しだった。
雑誌にテレビに広告にと街中あちこちで、数ヶ月後には自分が関わった商品の広告を目にすることができる。
それは自分が頑張った成果でもあるから嬉しかったしやりがいを感じていた。
やっぱり私には仕事だけだ。
そう思えてしまうほどに。
「陽奈多さん、イメージモデルの最終候補まとめたんですけど、確認してもらえますか?」
「え?!あ、うん。」
珍しくボーッとしてしまった私は慌てサブチーフの奈々が渡す資料に目を通す。
「陽奈多さんがボンヤリしてるなんて珍しいですね。」
「え?……あはは、寝不足かな?」
クスリと笑う奈々に苦笑いを返す。
……あ。
パラパラと資料に目を通していると、一点で手が止まった。
「あ、陽奈多さんでもやっぱ好きだったりするんですか?カッコイイですよね~!さすが抱かれたい男5年連続1位!」
目を輝かせて話す奈々の言葉に曖昧に笑う。
女性候補者ばかりのイメージモデルの資料には、あのルイが混ざっていた。
ルイだから手が止まったのではない、1人男性だから目がいったのだ。
そう思うだと信じたい。
にしても、宣材写真までスターオーラで輝いてるよ。
錦野旦の再来か?
なんて世代でもないくせに、昭和感満載なツッコミをして自分で笑いそうになるのをこらえる。
「みんなとも話してたんですけど、今回一緒に出すコフレキット『自分にご褒美』ってコンセプトあるじゃないですか?だから女性モデルを使わずに彼をって声も多いんですよ。」
「へぇ……そうなんだ。」
私はルイを激しく推薦する彼女に苦笑いをすることしか出来なかった。
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