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告白
手紙がちゃんと渡ったかも分からず、ただ遠くから見ていただけの情けない自分にため息をつきながら、私は家へ向かってトボトボと歩いていた。
テレビによく出てくる遠い存在というのはあの日から分かっていたけれど、今日改めて別世界の人なんだという現実を突きつけられた気がした。
簡単に近付くことすらできない人なのだ。
やっぱり諦めるしかないのかな…。
妊娠の事実を伝えるなんて、現実的に考えて無理なのかもしれない…そう思った。
PLLLLL……
事務所から駅に向かって歩いている途中、電話がかかってきた。
…誰だろ?仕事の人かな?
登録していない電話番号からかかって来るのは良くあることで、ためらわずに電話に出る。
「はい。」
「………。」
出たのに電話の向こうの人は黙っている。
「……もしもし?」
「……俺だけど。」
誰だよっ!って言いたかったけど、なぜか分かってしまった。
……ルイ。
まさか本当に電話をかけてくれるなんて思わなかった…。
ジャケットの手紙には返事なかったのに。
「おい、聞いてんのか?」
「え、あ……はい!聞いてます。」
慌てて電話に返事をする。
「話って……何?」
「えっと……あの。」
「売ったりしないよな?写真でも撮ってた?」
「え?」
売る?写真?
…何の話?
「誰かに頼まれた?」
「いや、頼まれたとか何もないんですけど。」
「……。」
彼が何を考えているのかよく分からないけど、なんか勘違いしているみたい。
「売るって、パパラッチ……てやつですか?……写真どころか私、あの日の記憶も大してないのに。」
「……。」
「……。」
私の言葉によって彼は黙ってしまった。
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