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ご飯を食べ終えると次郎はソファに座って、赤ちゃん雑誌を読んでいた。
その間に洗い物をしてリビングに戻ると、次郎は座ったまま眠ってしまっている。
隣に座り、様子をうかがう私にはまったく気付かずにぐっすりだ。
座ったまま寝るなんて、よっぽど疲れてるのかな。
空いてる時間をここに来るのに使っているなら、単純に考えて休む時間が減っているはず。
私から元気をもらってるから大丈夫と言っていたけど、体力的に無理していないのか気になった。
「次郎、寝るなら帰ってゆっくり寝たほうがいいんじゃない?」
肩を優しく叩き声を掛けると、小さく唸りながら顔をしかめる。
「ん、……もうちょい。」
そう言うと、次郎はゆっくり上半身を倒した。
「え?」
私の膝に頭を乗せた次郎は規則正しく胸を上下させる。
「……寝てる。」
顔を覗き込むと気持ちよさそうに、眠っていた。
膝枕の状態になった私は、どうしようかと一人辺りをキョロキョロする。
完全に手持ち無沙汰になった私は、次郎を観察することにした。
女の子みたいに長い睫毛に綺麗な肌。
スキンケアどうやってんだろう、そう思ってしまうほどツルツルの肌は女から見ても羨ましい。
そっと、頭を撫でて手を止めた。
気付かなかったけど、次郎の頭は整髪剤でカチカチだった。
よく見ればメイクもしたまままだ。
今日はテレビ番組の収録だと言っていた。
その日の仕事が終われば、シャワーを浴びてメイクも全部落とすと聞いたことがある。
テレビ局ならシャワー室はあるはずだし、シャワーを浴びる時間も削ってここに来たのか、それともこの後まだ仕事が残っているのか。
どちらにしろ、限られた時間の中で無理矢理ここに来てくれているのが分かった。
有り難いし、嬉しいけど……体調を壊さないか心配だ。
「次郎、そろそろ起きて。」
マネージャーさんから呼び出しの連絡もなく1時間くらい経った頃、いい加減帰って休んだ方が良いだろうと声をかけた。
「ん?……ああ…わりぃ……。」
寝ぼけているのか、ポツリポツリと声を発した次郎はゆっくり起き上がった。
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