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「あ、でも、もうこの国の人を襲うのはやめてください! これからは平和に、穏やかに暮らすと誓って頂かないと困ります」
「そなたが望むのであればそうしよう。どうやら先ほどのそなたの歌声で我の中にあった闇が全て消え去ったらしい。もうこの国を襲う意思はない。そなたに誓おう」
「ありがとうございます」
私が笑うと大魔王もふんわりと笑った。その笑顔に禍々しさは感じない。彼が言っていることは本心だろう。なぜかそう確信できた。
彼が私に手を差し伸べたので私はその手を取った。これからどこで生活するかはわからない。私達を受け入れてくれる世界を探そうと思う。
未だに泡を吹いている勇者御一行を背に、私と彼は旅立った。一部始終は録画された映像からわかるであろう。国王様の元で倒れていると思われるマネージャーがあとは上手くやってくれるはずだ。
「そういえば、まだそなたの名を聞いていなかったな」
「私もまだ貴方の名前を聞いていません」
私達は顔を見合わせて笑った。名前も知らない相手と結婚するってすごい状況だわ。
二度目の生で精一杯夢を追いかけて走ってきた。今度は愛に生きよう。前世の分も含めて、彼を愛そう。
私は彼の耳に口を寄せ囁く。
「私の名前は――――」
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