猫は思う

1/5
前へ
/38ページ
次へ

猫は思う

 吾輩(おれ)は猫である。名前はこげ太だ。  俺の了承を得ずに決定したこの名前は俺を拾った真妃(まき)が付けた。当時六歳の真妃は小さな手で俺を抱き上げると「まきのおうちにおいで、猫ちゃん……じゃなくて、うーん……こげ太!」とにっこり笑った。別に俺は捨てられた訳じゃない。ただそこで日の光をのんびり浴びていただけだ。飼い主なんて居ない。自由気ままに生きてきた俺が初めて人間に飼われることになったのには驚いた。  真妃が勝手に俺を捨て猫だと判断し、名前を付けた。親の了承を得ることなく自宅に連れ帰って風呂場に直行。異変に気付いた真妃の母親が止めてくれなければ俺は水浸しになっていただろう。その後母親にしっかり洗われて結局水浸しになったけどな。  何はともあれ俺は真妃と暮らすことを選んだ。正直いつでも出ていけたが、真妃があまりにも愛おしそうな目で俺をもふるものだから、仕方なく一緒にいてやることにした。決して真妃の笑った顔が可愛いからではない。仕方なくだ。仕方なく。     
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加