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隣で小煩く昨日のバラエティの話をしている男子クラスメート達は【幸】の持ち主だ。私もその番組を見ていたが、何がそんなに楽しいのか分からなかった。きっと私が【不幸】保有者だからなのだろう。早くすり替えなければ、私はずっと【不幸】のままだ。
昨日、この【幸】保有の男子グループが【不幸】保有者であるだろう男子から金を巻き上げているのを見た。公道の真ん中で堂々とだ。それは恐喝と言う名の犯罪であるにも拘らず、誰にも公表されることなく、罰されずに終わった。
【幸】保有者は、【不幸】保有者からならば何かを奪ってもよいのだ。それは自然の摂理なのだろう。何かを奪われるものは総じて【不幸】なのだから、奪うものは皆【幸】を保有しているに決まっている。【幸】と【不幸】の数が決まっているのなら、誰かから奪い取り替えるしかない。ならば【幸】保有者とて抗うだろう。【幸】を奪われた時、私はまだ子どもだったから抗い切れなかったのだ。
そうだ。私はかつて【幸】保有者だったのだから、【幸】を奪い返すことは自分のものを取り返すことだ。今は【不幸】を保持したままではあるが、それはどこかの盗人に取り替えられたからに過ぎない。
ならば早く私も奪わなくては。
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