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日々心をすり減らしていた私のところに、実家から一通の手紙が届いた。
開いてみれば中にはもう一つの封筒が入っており、差出人は菜月だった。懐かしい幼馴染の手紙に一時だけ【不幸】を忘れ、手紙に目を通す。
手紙には懐かしい昔の話と、また近くに越してくることが出来たので旧交を温めたい旨が書かれてあった。私はすぐに彼女に連絡を取った。
20年のブランクなど、私達には関係なかった。懐かしいあの頃。別れたあとのこと。今の状況。話し始めれば止まらない。彼女は私に聞かれるままに何でも話してくれた。
「旦那の昇進で、こっちに移住することになったの。まだ家も新しいから綺麗なうちに遊びに来てね。仕事は暫く休みだから何時でもいいよ。今お腹に二人目がいてね……」
彼女の話を聞いているうちに妙な思いが胸の奥に沸き立つ。
彼女が【幸】保有者なのは間違いない。だが――――最初からそうだったのだろうか。
私の【幸】は彼女が離れてから失われた。もしかすると、私の【幸】を【不幸】に取り替えたのは――彼女だったのではなかろうか。
何という単純な話だ。私は突然目の前が開けた気がした。
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