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ソレが芽生えた原因は、小学四年生の時見たサスペスドラマだった。
至高の美しさを持った女優が、嫉妬にかられた先輩から毒殺される。そんな当時ですら手垢に塗れたチープな話だった。
舞台衣装を着飾り、美しく彩られた棺桶の中で彼女は眠るように死んでいた。
いや、ドラマなのだから本当に死んではいない。眠ってすらいなかっただろう。ただ目を瞑り、死を演じていた。
彼女の美しく冷たい顔を見た時、性に目覚めたばかりの僕の胸で何かが爆ぜた。
当時、国語の授業で「赤い実はじけた」を読まされていた僕は「ああ、この事か」と思ったのを良く覚えている。
突然ドキドキと胸が高鳴り、隣に座る母親に聞こえるのでは無いかと心配した。
思えば十五年前の、この時から僕の人生は半分決まっていたのかもしれない。
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