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「あれ?」
加奈子は鞄からティッシュを取り出そうとして、自身の携帯端末に着信があったことに気が付いた。
「春香からいっぱい着信来てる。何だろ」
「何か忘れ物でもしたんじゃないの?」
そう言って清子は、目の前に置かれたジンジャーエールに口をつける。
「そんな筈はないんだけどなぁ」
春香に掛け直すも、加奈子は訝しげな顔をしたまま「出ないなぁ」と呟くと、通話を切り「ま、いっか」と一人納得した。
「あ、そう言えば春香のお土産に、こけしあげたんだ」
「ふーん。反応どうだった?」
清子は大して興味もなさそうな顔で、ストローをくるくると回す。
「うん。凄く喜んでくれたよ。キヨちゃんのアドバイス通り、こけしにして良かったよ。安産祈願だもんね」
加奈子はそう言って再び携帯端末を弄る。
「ほら、こんなやつ」
見せてきた画面に映る切れ長の瞳。おちょぼ口。大きな頭。赤で彩られた円柱の体。
「なかなか可愛いじゃない?」
加奈子は他にも数枚の画像を見せる。
「うーん。でも、アタシはやっぱりこけしって怖いかな」
「あれ? キヨちゃんって、こけし嫌いだっけ?」
清子は苦笑を浮かべて頷いた。
「『子消し』は怖いから、ね」
了
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