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あれは、もう15年も前――
「じゃあ、意外性のある怖いものは?」
坂道を登りながら、加奈子が閃いたとばかりに声をあげた。
家の近い者同士、春香と加奈子、そしてもう一人。キヨちゃん――清子はいつも一緒に下校していた。
下校する三人がよくやっていた、お題をあげて、それをお互いに答え、三人の秘密にする「秘密の共有ゲーム」。いつから始めたのかは忘れてしまったが、それが三人の下校時の決まりごとになっていた。しかし、それも毎日となると、お題の方が尽きてくる。考えた末、加奈子が既出の「怖いもの」に「意外性」という言葉をつけてきた。
「見た目、もの凄く怖いって訳じゃないし、どうして怖いのかも分からないけれど、何か怖いっていうものあるじゃない? 因みにウチは揚羽蝶。あの羽がよく分からないけど怖いんだ」
「ああ、それだったら私はキューピー人形。ちっちゃい頃、恐怖のキューピー人形って話を聞いてから、何か駄目なんだよね。別に話は大して怖くなかったから、殆ど忘れちゃったんだけど、嫌いなの。触れるし、部屋に置いておいても平気だけど、何か嫌。怖い」
春香と加奈子はすぐに思いついたものを口にしたが、清子は未だ思案顔だった。
「キヨちゃんは?」
促す加奈子には向かず、「考え中」と真面目な顔で一点を見つめていた。
清子は何でもかんでも真剣に考えすぎるところがあった。分からないことはすぐに調べ上げ、御座なりな答えを出さない。だが、それゆえに博識で、同い年とは思えないようなものの考え方をする。それが二人には新鮮で、彼女の知識のおこぼれを貰って、自分も頭がよくなった気さえしていた。
「キヨちゃんはいつも真面目だよね」
「そうそう。なんとなく嫌ってものでもいいのに」
春香と加奈子が次のお題を探していると、ぽつり「こけし」と聴こえた。
「こけし?」
「うん。こけし。アタシはこけしが怖いな。だって――」
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