『KRUMMLAUF』

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 互いに、宝物の発表になってしまった。  屋根の上で会話をしていると、声が星に吸い込まれてゆくようであった。  明日も、慶松旅館の手伝いをする予定であるので、早く眠った方がいい。でも、もう少しだけ、俺は大切な人に囲まれていたい。 「慶松、信哉さんが義兄さんになるのか……」  そこで、慶松は微妙な表情をしていた。 「……いい人ですよね」  信哉は、出来る人ではあるが、間違ってもいい人ではない。 「頑張れ、慶松……」  すると、紳まで屋根の上に座っていた。 「あ、紳さん」  俺が声を掛けると、慶松はばっちり紳を見たが、見なかった事にしていた。真面目な慶松にとっては、見えていても、紳は死んだ祖父なのであろう。 「……見比べると、紳さん、慶松さんとよく似ていますけど」  御調も、見比べているので、紳が見えているらしい。里見も、紳と慶松を見比べていた。 「あの、紳さん。死んだ世界って、どうですか?」  里見は、自分は長くは生きられないと思っている。だから、心配なのであろう。 「うん。時間も空間も無くてね、見失うと何もない。でも、私は幸せだよね、いつも大女将が見えている」  大女将と、紳は今も一緒に生きている。 「彼女はね、凄い美人でね。ちょっと、見ていると眩暈がしそうであった……」  大女将は、今も美人だ。でも、若い頃は更に美人だったろうと、瑠璃子を見ていれば分かる。 「氷花君も美人だよね」  紳は遠くを見ていた。  ここに瑠璃子が居るということは、大女将が慶松旅館にいるのだろう。紳は、慶松旅館を見つめていた。 「紳さん、慶松旅館をお願いします」  やっと見えていると認めたのか、慶松が紳を見つめた。 「それは、そろそろ、君の役目だね」 「もう少し、お願いします」  この時間は永遠ではないと、分かっている。でも、俺も、慶松に恋していたい。 「俺からも、お願いします」  すると、紳が笑っていた。 「氷花君に頼まれると、嫌とは言えないな。君は、彼女に似ていて、泣かせたくない」  では、もう少し、このままで過ごそう。  結構、長い時間、空を見ていたのか、体が冷えてきた。中に戻ろうかとすると、庭に信哉が出てきて、上を見上げていた。星の光で、信哉の表情も見える。 「そんな所に集まっていたのか」  信哉も来ようとしているが、俺達はそろそろ下に降りる。 「俺達は、部屋に戻りますよ」  部屋裏に降りると、信哉が来ていた。
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