45人が本棚に入れています
本棚に追加
「ここは、慶松君の部屋なのかな。いいね」
信哉は、瑠璃子と和解したらしい。瑠璃子は、信哉との結婚を先延ばしにしていた。
慶松の部屋では落ち着かないので、居間に行ってみた。すると、信哉がビールを飲んでいる。
居間はそれなりに広いが、俺は眠くなってきていた。
「氷花君も、慶松君も眠そうだね。ごめんね、やっぱり眠っていいよ」
俺と、慶松は部屋に戻ると、爆睡してしまっていた。
翌日、慶松温泉郷の受付をしてから、帰る準備をする。昼飯を早めに食べ、信哉を待っていると中々来ない。
浅見と探し始めると、信哉は渓流を見ていた。
「信哉さん、帰りますよ」
信哉が手を振って、車に戻って来た。
「紳さんと話してしまったよ」
車の中で、信哉が紳との会話を教えてくれた。
「あの渓流には、川魚がいる」
「俺も、鰻を採りました」
でも、紳が死んだのは、魚のせいだと思っている大女将は、川魚を絶対に客にも出さない。
「鰻、食べてしまいましたよ」
「……少し、鰻から離れてね……」
あんなに、上流に鰻がいるとは思わなかったが、もしかしたら紳が用意したのかもしれない。
車が高速に入ると、浅見はウトウトとしていた。浅見は、かなり頑張った。
「紳さんは、魚も復帰して欲しいと言っていた。他に、瑠璃子は旅館を継がなくてもいいし、自由でいいとも」
信哉は、沢山の子供が欲しいらしい。理想は、五人兄弟であった。
「五人は多いですね」
「そうだね。でも、そのくらい欲しい」
高速で横を見ると、引っ越しのような荷物を積んだ車が追い越しして行った。どこか、既視感がある。すると、布団の隙間から、子供の手が伸びて、バイバイとしている。
「……信哉さん、スピードを落としてください。次のサービスエリアで運転を交代します」
俺は、慶松に電話を掛けてみた。すると、慶松は運転中であったのか、御調が電話に出た。
「御調、燃料を満タンにして、先に休憩をしていて。この道、事故渋滞が起きる。間に合えば、少し、下道を走る」
この付近の下道は、細い道が多いので、余り走りたくはない。でも、早く家には帰りたい。
サービスエリアに行くと、先に慶松の車が停まっていた。その車の横に、駐車してみる。
「慶松」
「俺も見たよ。あれは、事故車だね」
サービスエリアからも下道に降りられるので、暫し、下道に切り替える事にした。
最初のコメントを投稿しよう!