『KRUMMLAUF』

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「漬物がデザートなのか……」  スイカや、メロンの時もあるが、基本、氷の中に置いていた。夏はそのまま庭に持って行って、涼みながら食べていた。  汗をかいた後の、しょっぱさが美味しいのだ。 「たまには、手作りアイスも作ろうかな」  市販品はいくらでも売っているが、手作りは少ないだろう。俺の実家は、コンビニからもスーパーからも遠かったので、基本は手作りだった。しかし、牛を飼っている家は、近かったので、牛乳は大量にあった。庭には鶏もいたので、卵もある。 「氷花って、食べ物に執着が凄いよね」 「まあ、食べる事が生きる事だったしね」  ラーメンを食べ終わると、食器を奥に片づける。食器洗いの中に入れてセットすると、慶松も横で鍋などを洗っていた。 「氷花は泳げるの?あまり、泳いでいる所は見なかったけど」  鍋を洗っているので、プールを連想したのであろうか。 「泳げるよ、川があったし、池もあったし。それも、水道水よりもきれいな水だったしね」  渓流を滑り落ちるのが、夏の定番の涼みであった。滑り落ちては、走って登り、再び滑り落ちる。幾度も溺れかけて、いつの間にか泳げるようになっていた。 「溺れかけたって……プールでは泳がなかったのか」 「プールは温くて嫌だよ」  慶松は、俺を見上げていた。 「氷花って、見た目よりも野生児だよね」 「俺、自分の見た目は分からないよ」  これから駅前に行き、エビを購入してこよう。店を出ようとすると、慶松が材料を揃えてくれた。 「だいたい、あるよ。使って」  ラーメン屋松吉で、エビ料理などあったのであろうか。しかし、慶松も日々研究しているので、材料も豊富にあるのかもしれない。 「ありがとう。作ってみるよ」  俺は材料を持って、店を出ようとする。しかし、慶松に腕を掴まれて、軽くキスをされていた。 「相変わらず、家では気を使うよね」  同居人がいるので、家ではあまりできない。  ラーメン屋松吉には、今は誰もいない。しかも厨房の奥で、人目にもつかない。  俺が材料を台の上に置くと、慶松はしっかりと抱き込んで、今度は舌を入れて口付けしてくる。口は内臓の一部で、舌の動きが体の芯まで響く。痺れが下半身まで刺激する。でも、体が慣らされていて、慶松を受け入れているいつもの内臓が、反応して締めるようであった。 「氷花、ここが熱い?凄いね、反応している」
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