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私が小学生になると、母が働き始めた。
母は私より早く家を出なくてはならないので、用意されたおかずに、ごはんとみそ汁を自分でよそう。
中学年になると、みそ汁を自分で作ることが許された。
母の居る休日、私が作ったインスタントではない初めてのみそ汁は、戻し切らない乾燥ワカメを入れすぎたため、大変なことになった。
「ワカメ……」
「の、みそ汁」
「ワカメ……」
「の!お・み・そ・し・る!」
ふて腐れながらワカメをかみしめる。
汁と具の割合のおかしなみそ汁を、母は可笑しそうに食べてくれた。
はじめの頃は顆粒のだしの素を使っていたが、ある時、小遣いでかつお節を買い、出汁に目覚める。しかし、初めて買ったかつお節は数日分のみそ汁に消えた。
そこで、母の買い物について行き、かつお節や昆布などをコッソリ買い物カゴに入れる。
「あのさあ、もっと身の丈にあった物にしてくれる?」
ここで母により、高級と書かれた乾物たちがお徳用へと替えられる。しかし、これは獲物を確実に手にいれるための作戦。お徳用で十分なのだ。「ゲットだぜ」とニヤリとする。
しかし、その後おやつの菓子を入れようとしたら、
「かつお節、買ったよね」
ニヤリと笑う母により、こちらもお徳用の菓子に替えられてしまった。
毎日の研究の結果、かつお節や昆布や煮干しを水とともに冷蔵庫に入れて一晩置くスタイルに落ち着いた。翌朝それでみそ汁を作る。
休みの日にはたまに鍋で出汁をとる。
琥珀色の液体に、具を入れて、お味噌を溶かしていくのが好きだ。
失敗するときもある。面倒だなと思うときもある。時間がない朝、母に邪魔だと顔を顰められながら作るときもある。
だけど、みそ汁作りは、毎日の習慣になった。
みそ汁を飲めば、「よし行くぞ」そう思えた。
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