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追う男
きっかけは他愛の無い世間話だった。
別件の捜査案件で家宅捜索をすることになり、マンションの管理会社へ協力を要請。その際の担当者が漏らした――ただの茶請け話が事の始まりだった。
店子が立て続けに行方知れずになった、と
家賃の回収やら賃貸契約の解除、家族とのやり取り等、事後処理はお決まりコースだったが、そんなことが持ち物件で立て続いたため、てんてこ舞いしていると嘆いていた。
正直なところ、こうした所謂「蒸発」なんて話は珍しくも無いことだ。借金苦や人間関係のトラブル、犯罪に手を染めた者など、ある日突然、姿をくらますなんてことは、よくある。
俺もその時はそれほど気に止めていなかった。後日、その行方不明者の女性に捜索願いが出され、その案件を担当することになるまでは。届けを出したのはその両親であり、姿を消すような理由にはまったく思い当たることがない、という。
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