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始めりと終わり
きっと私が目を閉じたとき世界は色を失い、私が目を開けたとき世界は輝きだす
the134340th(ホシ)
目を閉じる度、そこの世界は色を無くして、目を開く度、世界は輝きを取り戻した。
「全部夢だよ」って、紫色の空がまた答える。
私は目をつぶる。
そこには好きだった小説のカバーも見えなければ、私の好きな人だって映りはしない。
今まであの童話みたいに、パンの耳を少しずつちぎって、歩いてきたわけじゃない。
だからどうやってここまで生きてきたかも、今では夢の中みたいに曖昧で、自分のことが理解できない。
目を開けるとそこには大勢の人間が何かを焦るように早歩きをしながら駅の改札を通っていく。
私はまた目を閉じる。
まるで眠っているお姫様が、王子様のキスで目覚めるのを待つように。
明日の難しいことを考えて回れ右をした。みんなはいろいろ忙しいみたいだけれど、バイトも部活も、宿題も、今の私にはそんな熱、高校受験で全て燃え尽きてしまって、灰色の塵すら残っていない。
それはきっと君のせい。
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