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「ね、悠ちゃん。武尊どうしたの? なんか最近頑張り過ぎな気もするけど」
「ナルちゃんが指令室の手伝いを終えて現場に復帰したでしょ?」
「うん」
「それからしばらくして、武尊からナルちゃんのこれまでのいきさつを聞かれてさ」
「話したの?」
黒川が口を挟む。
「ううん、ナルちゃんの承諾無しには話せないって言った」
「そっか」
「でも、あまりに熱心に聞いてくるから、ちょこっと話しちゃったんだ」
「ええっ」
黒川が前のめりになる。
「ごめん! ナルちゃんごめんね・・・・・・?」
大地が顔の前で手を合わせる。
「あ、別に大丈夫だよ。隠してるわけじゃないし」
「悠真くん、で、何を話したの?」
黒川が先を促す。
「両親を事件で亡くした事、それからここに連れてこられた事は話した。具体的な内容に関しては何も話してない。ごめんね、あいつずっとナルちゃんの事心配してたから」
大地がすまなそうに言う。
「そっか、余計な心配かけちゃったんだな」
成海が少し俯いた。
「ナルちゃん、大丈夫?」
大地が心配そうに顔を覗く。
「大丈夫。悠ちゃん気使わせてごめん」
「怜くんには俺達がついてる。だからもう一人で抱えようとしないで」
黒川が成海の手を握る。
「うん、サンキュ」
成海が柔らかく微笑む。
話が落ち着いたところでチーンという場違いな音が響いた。
「お、きたきた。とにかく腹ごしらえしよ」
大地と黒川がトレーを取りに立つ。
「・・・・・・武尊」
成海が呟く様に武尊の名を呼んだ。
「はい、怜くん」
黒川が成海の前にトレーを置いた。
「あ、ごめん。ありがと」
「じゃあ、頂きま~」
「悠真! お前指令室に居るって言ったろ!」
大地が手を合わせると同時に結城が勢い込んで入ってきた。
「あ、ヒロ」
「あ、ヒロじゃね~! ったくお前はいつもいつも」
「美味いっ! このマーボー丼」
大地が結城の話を無視して食べ始める。
「・・・・・・お前なぁ!」
結城がわなわなと拳を握りしめる。
「ヒロ、ヒロも座ってなんか頼もうよ。ね?」
成海が結城をなだめる。
「ったく。・・・・・・怜どうした?」
「え?」
「なんか元気ないじゃん」
結城が大地の隣に座り、メニューをパラパラとめくる。
「そんなことないよ」
成海が困った様に笑う。
「俺、ハンバーガーにしよ」
結城がタブレットを操作する。
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