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あれを見て逃げないという選択肢はないと僕は思う。黙ってしまった僕に学園長は、
「彼はとても優秀だが、服を脱ぎ出す癖があって。それさえなければねぇ……まあ、悪い人間ではないし気に入られたなら、君にとっても有意義な部分もあるだろうから、しばらくは様子を見てみるといい」
「で、でも……」
「それに全裸で現れるのが嫌なら、服を着るよう君がお願いすればいい。好きな相手の言葉なら届くだろう」
「でも……」
「それに彼の場合自身の筋肉を誇示する威嚇の意味も有るようだから、いざとなれば君も服を脱いで筋肉を見せつけてやればいい」
そんな無茶なと僕は思った。だって僕にはそんなに筋肉がついていない。
でも、さっきのあれはただ服を脱ぐのが趣味の男に一目惚れされただけらしい。
そう考えるとそこまで怖くない気がする。
と、そこで真崎叔父さんが制服を渡してくれたのでそれを僕は貰い、
「よし、じゃあ早速寮に案内するよ。荷物は?」
「変態に追いかけられた時に入り口においてきちゃった……」
「ではそれを回収して、寮に向かおうか」
そう言われて僕は、頷いたのだった。
荷物を拾い集め、僕は真崎叔父さんに案内されて寮に向かう 。
暖かな風が僕の頬をくすぐる。
緑の匂いがする。
周りが木々で覆われているためか、僕が住んでいたその場所よりも涼しい気がする。
空気も美味しいし、もしかしたなら意外にも住み心地はいいのかもしれない。
そう僕は期待を胸に、叔父さんに案内されるまま寮の部屋に向かい、そして、
「302号室、ここだね、確か鍵はこれだったかな」
取り出した鍵を僕に渡す。銀色の鍵で、端には赤い紐で鈴が付けられている。
その鈴にも細かな鳥の様な細工がされていた。
不思議な飾りだなと僕が思って見ていると、真崎叔父さんが僕の手のひらに乗ったその鈴の部分を軽く人差し指ではじく。
りりっと乾いた音を奏でる。
それを見て真崎叔父さんは、
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