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「こっちの偽不良君が、飯島正宗君だ」
「……先生、偽不良じゃなくて、俺は本当の不良なんです」
「はいはい、それでこちらの女装が可愛いこの子が、宇佐見美宇君だ」
不良君が、そんな適当に流さずにと何かを言っているが、真崎叔父さんは無視した。
そして、その女装な彼が僕に近づいてきて、じっと僕を見つめてから頷き、
「……よし、女装させよう」
「え?」
「いやいや、可愛い子が来たなと思っただけだよ。後はその内女装させようかと体を狙っているだけなのです」
「お、叔父さん……」
僕は不安を覚えて叔父さんに助けを求めたが、真崎叔父さんは頬笑み、
「じゃあ、これで皆揃ったし、頑張れ」
「お、叔父さん」
「では、さらばだー」
そう言って叔父さんはこの場から走り去る。それを見送った僕は、動けずにいると、
「とりあえず荷物を置いた方が良いと思うよ」
と、皐月に言われたのだった。
季節外れの転校生だった事もあってか、天才少年? な皐月、女装少年な美宇に根掘り葉掘り他の高校や中学生活を聞かれていた。
しかも、遠巻きで興味がないふりをしている不良君な正宗君も、話が気になるらしくちらちらこちらを見ている。
なんだ か可愛い人だな~、と思いながら、持ってきたお菓子をそこで僕は取り出した。
さくさくの棒状の生地にチョコレートがコーティングされた、そう……○ッキー。
折角なので友好を深める意味合いも含めて皆にあげようと思っていた所、はっとしたように不良君がこちらを見た。
じっと僕の持っている、○ッキーを凝視している。
これはもしかして、これで釣れるか、と僕が思って、
「あの、正宗君も、いる?」
「いる!」
チョロかった。遠巻きに見ていたのに近づいてきて、○ッキーを一本取り出し一口。口に含んで幸せそうな顔をする彼を見ながら、偽不良の意味が何となく分かった気がした。ともあれ同じ部屋で今後も一緒に生活していくので、
「もう一本いるかな?」
「うん」
この人、何で不良のふりをしているのかなと、僕は思わずにはいられなかったのだった。
結局夜遅くまで話し込んだ僕達は、それでも十二時前には就寝して、そして朝六時。
「アサダヨーアサダヨー」
「いたたたたた」
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