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僕は目覚ましがなる音と共に頬を引っ張られる痛みで涙目になりながら目を覚ました。
よく見ると上から金属製のアームがのびてきて僕の頬を引っ張っている。
多分、皐月が関係しているのだろう。
そう思いながら二段ベッドの何故か下の部分に放り込まれていた僕が周りを見回すと、全員起きているようだった。
早起きなんだなと僕は背伸びをして大きく欠伸をし、顔を洗いに洗面台に向かう……所で僕は見てしまった。
一生懸命に、髪を整え、赤い付けが見をわざわざ髪に付けて、しかも穴の開いていない耳に、ピアスっぽい何かを幾つも付けている。
何処からどう見ても、偽物のなんちゃって不良の様相だ。
驚くべき光景を目にした僕は、そこで彼に気付かれた。
くるりと怒ったように振り向いた彼は僕を見て、
「……見たな」
「見ていません!」
という事で僕は見なかった事にして洗面所に向かう。
洗面所は共同だったのですでにそこそこに人がいて、その中に皐月と美宇がいたので手を振りそちらに向かう。
何となく周りの人達の視線を感じたから、転校生だからだろうと僕は思う事にした。そして、
「皆早起きなんだね」
「というよりはそこの美宇目当てが多いんだけれどな。こ の男子校の“姫”だし」
「きゃはっ☆」
美宇が片目をつむり、自信ありげに微笑む。
ただ僕としては、何で男が姫なんだとか、男子校の怪しい校風とか嫌過ぎると、そんな物に絶対に染まってたまるものかと思った。
そうして顔を洗ってからちょっと大きめの制服に着替えて、共同の食堂に向かう。
ここの学校はご飯が美味しいんだよ、と皐月達から聞かされていた僕はすっかり昨日のことなど忘れていたのだ。それは四人でこの食堂に入ってきた時の事。
「……よく来たな、俺の嫁」
「ひぃいいいいいいい」
そこには服を着た状態の東雲生徒会長が薄く笑いながら立っていたのだった。
変態美形な東雲生徒会長。
そしてその周りにいる様々な種類の可愛かったり格好良かったりする男達。
とはいえその中で群を抜いて魅力的なのは東雲会長である。
それは僕も認めよう。だが変態である事には変わりない。
僕はひきつるのを感じながら一歩後ずさり、
「ぼ、僕は急用を思い出した気がしますです」
「こんな朝からそんなはずはないね。……君は嘘をついているね」
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