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そう笑いながら近づいてくる彼に僕は凍りつく。
どうしようどうしよう、心の中ではその言葉が反芻されるだけで、何もいいアイデアが浮かばない。
そこで、その東雲生徒会長の後ろでその取り巻き、の様な彼らが、
「会長、その生徒は……昨日来たばかりの転入生ですね?」
「それが嫁だなんてどういう事なのですか?」
「一目ぼれした」
東雲生徒会長がそう告げると、彼らは沈黙する。
そして僕も、昨日真崎叔父さん達というか学園長が言っていた事が、真実だと知る。
そう、僕は一目惚れされてしまったのだ、男に。
確かに顔は僕が今まで見た事がないくらい整っているし、体格も含めて、僕が欲しいと思っている物全部持っている。
でも僕は男の嫁にされたいなんて一度たりとも思った事がないのだ。
そもそも考えもしなかった。そう凍りついている僕だけれど、正気に戻ったのはその会長の取り巻きの方がはやかったようだ。だが、
「ま、まさかこの博愛主義の会長が、たった一人に一目ぼれするなんて……本気ですか?」
「本気だとも」
その会話を聞いていた僕は、冗談にして欲しかったと思う。
そんな絶望する僕を、その会長の取り巻きたちがじっと見つめて、お互い顔を見合 わせて、うむと頷いた。
「これは全力で応援せざるを得ない!」
「な、何でですか、どうしてそんな……」
「だって僕達は、東雲生徒会長の親衛隊だから」
親衛隊。
物語の中しか聞いた事のない言葉に僕は更に意識が遠のくのを感じながら、
「で、でも僕、女の子が好きで……」
「そうか、それで?」
「で、ですから男性の方の嫁はちょっと……」
「いや、君も会長と共にいればその素晴らしさが分かるはずだ!」
目を輝かせて、親衛隊の一人が僕にそう告げて、周りの人達も頷いている。
人望が厚い生徒会長らしいが、そんな事はどうでもいい。
僕は男同士なんて嫌で、そこで僕は気づく。
「し、親衛隊なら僕みたいな平凡とは釣り合わないといって、いじめて追い出すとか……」
「君、その歳で二次元と三次元の区別がつかないのは問題だよ?」
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