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その見知らぬ美形のおじさんは学園長であったらしい。
名前は、香京院時雨(かきょういんしぐれ)というらしい。
真崎叔父さんが、ちょっと怒ったように僕に説明してくれた。
その真崎叔父さんは、相変わらず可愛い感じで、年齢の割に幼く見える。
ただ僕は、この真崎叔父さんの昔の姿によく似ているらしい。
つまりこんな風に男なのに可愛いと称されてしまう未来の姿が僕の……いやいや、これから僕も頑張れば、叔父さんの恋人? な学園長の様な男らしい美形――いや、そこまで高望はしないので男らしくなりたいと思う。
ちなみにその学園長のすぐ傍で、真崎叔父さんは先ほどの好意を僕に見られた事もあって怒っていて、時々腰にまわされた手を叩いていた。
そんな叔父さんはそこで僕に向かって頬笑み、
「よく来たね、悠真。本当は入口に行って待っていたかったんだけれど……ちょっと事情があっていけなかったんだ」
どんな事情か大体想像がついたので僕はそれ以上突っ込まない。
この真崎叔父さんは、近くに住んでいた事もあって、実の兄弟の様に育っていた。
だから今回も、真崎叔父さんがいるならそこまで不安はないかなと思った部分もある。 でも、もう駄目だ。
「真崎叔父さん、僕、この学園でやっていける自信がありません!」
「え! でもまだここに来たばかりだろう?」
「僕、さっき、全裸の男に“嫁”にされたんです!」
僕がそう告げると、真崎叔父さんは沈黙した。
それはそうだろう、そんなおかしな……と思っていると、学園長は頬笑み、
「そうなのかい? いや、おめでとう」
「お、おめでとうじゃないです、というか嫁って突然僕は言われたんですよ!」
「それは、黒髪の方?」
「黒髪でした」
「では、東雲生徒会長だろうね」
やっぱり生徒会長だったけれど、そんなことはどうでもいいのだ。
「ぼ、僕を嫁にって……」
「一目惚れされたんだろう、私が真崎に一目惚れしたように。いや、まさかここまで昔の真崎にそっくりだったとは……」
「で、でも僕、女の人が好きですし」
「ははは、まあ、ただ単に一目惚れしただけだろうから、特に危害を加えることはないと思うがね?」
「僕、追いかけられたんですが」
「それは逃げるからだろう」
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