Side A

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「な、なんの話だいきなり」  確かに俺はゲイだ。が、そのことをはっきりと自覚したのは東京に出てからだ。昔の知り合いにそんな話をしたことは一度もない。ましてやこいつに、自分が男に欲情するなんて話をするはずがなかった。  湊はさっきと同じような、ひとつも嬉しそうに見えない笑顔を作ると、ポケットから名刺を取り出して俺の方に差し出した。  一目見て、俺はぱっと顔をそむけた。見たくない現実がそこに書かれていた。 「二時間コースで聞いてるけど、初回は延長不可だから。早速始める?それともシャワーとかまだ?風呂でやるのもありだけど、ここ普通のビジネスホテルだからバスルーム狭そうだな」  俺は、明らかに性風俗のものとわかる店名と源氏名の入ったその名刺を、手の中でくしゃりと握り潰した。 「最初の質問に答えろ、湊」  こんな物騒な声は久しぶりに出した。 「理玖?」 「どうして、お前が、ここに、いるんだ」  睡眠不足で絶不調の俺の目の前に。しかもかつての友人としてではなく、いかがわしいサービスの提供者として。  湊は、羽織っていたネイビーのニットカーディガンを思わせぶりな仕草で脱いだ。 「理玖。お前、眠れないんだろ」     
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