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「誰のせいで曲が作れなかったと思ってんだ」
湊の腕を乱暴に掴むと、その細い身体をセミダブルのベッドの上に放り投げた。
「理玖!」
跳ね起きようとするのを押さえつけ、その上にのしかかる。
「二時間、だったな」
シャツの裾をめくり上げて、浅く浮いた腹筋を直に撫で上げてやった。
「あ……っ」
うろたえたような湊の声。だが、その奥に快楽を期待するような響きが潜んでいるのを、俺の耳は聞き逃してはくれなかった。
くそう。
そんな声を、他の奴にも聞かせてたのか。
「安眠させてもらうぜ、湊」
この不眠症にケリをつけてやる。
現実の方が夢よりもひどくなれば、もう、悪夢が現実になるのではと怯えることもなくなるだろう。
湊のことが、好きだった。
多分、最初に会った瞬間から惹かれていた。
湊の歌声が好きだった。湊の作る曲も好きだった。音楽がそのまま人の形になったかのような湊の存在に、ひたすら心を揺さぶられた。
でもそれは、こいつの才能に惚れ込んだだけなんだと俺は思い込もうとしていた。
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