第1作目

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  『「俺は一生、お前と一緒にいるって決めたから」 彼はそう言って私を強く抱きしめた。彼の温もりが私の体全体を包み込み思わず涙が溢れる。 「大好きだよ、透」 そうして私は彼の腕に包まれながらも息を引き取った。                         Fin』 「うぅ・・・感動する」 涙がとめどなく溢れてくる、箱ティッシュ一箱分全てを使い切ってもなお涙と鼻水が止まらない。思い切り鼻をかみティッシュを丸めてゴミ箱に向けて投げた。が、惜しくもゴミ箱の斜め右に落下した。今外した以外にも読んでいる途中にいくつも外したのが地面に虚しく転がっているので今更気にすることではないのだ。 「やっぱりユーキさんの作品は神作しかないわ。それに比べて・・・」 読み終わった作品のURLから自分の作品ページに飛び、パソコンの画面上に広げる。数十作品も投稿しているのだが総閲覧数は作品と同じ回数ほど。毎回授業中先生の話を全く聞かずにプロットを考えて必死に作品を書いているのだが、その努力も実ることはなく現在に至る。やっぱり才能の差なんだろうか、それとも私の努力がまだ足りないのか、毎日ユーキさんの作品を何個も読んで勉強しているというのに。 一週間前に更新した作品も閲覧数は0、ユーキさんは昨日あげた作品の閲覧回数は1万をとうに超えていた。ここまで差が出ると落ち込むを通り越して腹が立って来るのは気のせいじゃない、もう小説を書くのはやめてしまおうか。突っ伏した机の上には小説のプロットや登場人物の基本情報が書かれた紙が大量に積まれている、これら全て満足のいくような作品に仕上げてネットに上げているのに、どうしてこうもうまくいってくれないのだろうか。
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