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別れ、そして・・・
文化祭当日。
演劇部の演目「怪談ラブストーリー」は多くの拍手が渦巻く中、幕を閉じた。
そして幕が閉じた瞬間、
夏目綾音は消えた。
俺は最後の夏目絢架の表情を見ることができなかった。
ほかの部員たちは
すごくいい笑顔で『ありがとう』と言っていたと教えてくれた。
俺は、これからもきっとこの屋上にくるたび、
あいつのことを思い出す。
『私、夏目絢架っていいます!お願いです!助けてください!』
あの、大きな瞳で必死に訴えてきた、幽霊夏目絢架のことを・・・。
季節はめぐり、
4月、桜が散り始めた始業式。
俺はいつものように屋上に上った。
あー始業式たるいなー。
俺はいつものように空を見上げる。
あいつ・・・ちゃんと成仏したかな。
「あの!」
俺はあたりを見回す。
屋上の入り口に立つスーツ姿の女性。
俺はくわえていたタバコを落としそうになった。
「あの、私、今日からこの学校で英語を教えることになりました、夏目綾音です!!」
お前は、大きな瞳で訴えかけてきたんだ。
あの時と変わらない瞳で。
俺は、心が震えた気がした。
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