1人が本棚に入れています
本棚に追加
夕方。
俺は試験問題を作って、一服するために屋上にいた。
『先生。』
目の前には夏目。
音もなく現れるこいつ。
最初は驚いたが、最近慣れてきた。
「お前か。練習はどうだ?」
『すっごく楽しい!』
夏目はオレンジ色の空を見上げる。
「お前、ほんとに演劇好きなんだな。」
『はい。私、生きてた頃すごく人見知りだったんです。人に自分のこと話したり、表現するの苦手で。』
夏目はうつむきながら控えめに。
だけど一生懸命話してくれた。
『だけど、友達に誘われて入った演劇部で、自分の表現したかったこと、だんだん出せるようになりました。』
「そうか。」
俺たちの間に風が吹く。
『ねぇ、先生?・・・私ここにいていいのかな?』
それは夏目の普段言えない心の声のような気がした。
「いいかどうかはわからない。神様じゃないとな。でも大切なのは”いいか”じゃなくて夏目が”いたいか”じゃないのか?」
『先生・・・』
「少なくても、あいつらはお前を必要としてる。お前がくる前と今じゃ、部の雰囲気が全然違う。」
夏目の瞳から一滴涙が流れた。
その姿が、すごくきれいだった。
・・・俺何考えてんだ。
最初のコメントを投稿しよう!