偽りの運命の番

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時政はまだ若いながらも、その容姿に相応しい、堂々としたスマートな立ち振る舞いで出席者たちに挨拶をして回っていた。 隣にいた社長、時政の父親は何人かの若い女性を時政の近くに呼び寄せては「綺麗なお嬢さんだろう」だの「いい大学を出た、とても優秀な女性だぞ」だの、と必死に時政に紹介しているところを見るとどうやら皆、息子の花嫁候補にと考えているアルファの女性たちなのだろう。 父親としても、息子に早くアルファの女性と一緒になって、ゆくゆくはアルファの孫をとでも考えているようだ。 代々アルファの家系故に、血筋には敏感になっているのだろう。 そんな父親の考えは、時政も重々承知である。どの女性にも穏やかな笑みを浮かべ、女性の喜びそうな返事をして、和やかにその場を対応していたが、その腹の中では完全に相手の女性をスルーしていた。 確かに紹介された女性は一様に美しく、聡明そうな印象の女性ばかりで、不満はないが面白味も無い、と時政は思っていた。 高級ブランドのドレスやアクセサリーをこれ見よがしに身に付け、非常に巧みな化粧で艶やかな顔を作り上げ、男ウケしそうな笑顔を向けてきて、財閥の跡取り息子である時政に、取り入ろうと積極的に話し掛けてくるアルファ女性をかわし、時政がホールを歩いていると、一人の壁の花に目が止まった。     
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