偽りの運命の番

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小柄で華奢で、ダークスーツは着ているというより、羽織っているという方が近いくらいに似合っておらず、若い、というより幼いと形容してもよさそうな印象の青年。 青年は長めの前髪が顔にかかり鬱陶しげだったが、その間から見える艶やかな長い睫毛が印象的で、妙な色気を放っていた。 青年はいかにも所在無さげといった風で、俯きながら手に持っていたグラスを弄んでいた。 その青年が幸弥であった。 時政は幸弥を一目見るなり、幸弥がオメガであると感じ、興味を持った。 幸弥からはアルファ特有の自信に満ち溢れたオーラは微塵も感じられず、かといってベータでは出せないような、儚げで危うく、そして煽情的な雰囲気を醸し出していた。 アルファの狩猟本能のようなものが、僅かに匂い立つオメガ性のフェロモンを嗅ぎとり、狩るものとしての興味を刺激し、その後の行動に突き動かしていったのかもしれない。 時政は真っ直ぐに幸弥の元へと向かっていき、幸弥の真正面に立った。容姿端麗な男に何の前触れもなく、突然目の前に立ち塞がれ、幸弥が戸惑っていると、時政は冷静な様子で幸弥に話し掛けた。 「退屈しているようだね」 話し掛けられた幸弥は、不安そうな瞳を落ち着かなそうに動かしながらも、何か返事をしなければと、必死になっていた。 「こういう場所は慣れていないから、どうしたらいいか分からなくて」     
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