2 契約婚約、はじまります?

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 ピシャっと浴室の引き戸が閉められた。  かごの中には、バスタオルと着替えの、ブラウスとスカートが入っている。どれも、明日香がよく読んでいる雑誌に紹介されていた、10代の女の子に人気のブランドのものだ。……ちょっとだけ憧れていたから、少しだけうれしい。  服の下には、隠すように下着も入っていた。しかし…… 「……なんで、サイズぴったりなの?」 「あら、やっぱりお似合いですわ」 「……姫乃様はどんなものでもよくお似合いです」 「でも、少しスカートの裾が短いかもしれませんね」 「それはいけないな……。明日すぐ百貨店でサイズが合うものを購入するように、ついでに反物と帯も。姫乃様、何か好きな色やブランドなどはございますか?」 「ちょ、ちょっと待ってください」  お風呂から上がると、いわゆる大広間に通された。そこには、さっきの『ミキ』さんと私を助け出した『彼』が座っている。……しかし、畳の部屋が似合わない人なんて初めて見た。 「あの、あなたは一体誰なんですか?……どうして、私を助けてくれたんですか?」 「え……、まさか若様……名乗らずにつれてきたんですか?」 「あ、ああ…ははは、舞い上がってしまって忘れてしまいました」 「まったく、若と言ったら……」  ミキさんは額に手を当てて、あきれ返っている様子だ。そして、私に向き直る。 「大変失礼いたしました……私の名前は、橘龍哉と申します」 「橘組若頭であり、次期当主でいらっしゃいます」 「た、たちばなくみ?!」 「あら、ご存知でした?」 「そりゃ、そりゃもう……もちろん……」  橘組と言ったら、ここら辺一帯を〆ているヤ●ザのことだ。 どうやら、ヤ●ザが、大枚はたいて私を買ったらしい。 「本当に、若ってば説明不足にもほどがあります……」 「まったくでした…。大変失礼しました、『王子様』」 「その!」 事態についていけない私は、思いがけず声を荒げてしまった。飛び出した言葉を元に戻す方法を知らない私は、そのまま続けていく。 「……王子様って、何ですか?私、あなたにまで、『王子様』呼ばれる筋合いありません!」
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