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「……何でもするので、おうちにかえしてください」
喉からは搾り取った残りかすみたいな声しか出なかった。こぼれた涙が、頬を滑る。
まだ17歳だ、私を売ろうとした世間一般ではダメダメなクソ親父でも、やっぱり、父親が恋しい。
……それに、いい子に待っていたら、お母さんも帰ってくるかもしれない。帰ってくるって言っていた。……だから、私は家を離れちゃいけないんだ。
運転手さんの手が離れ、ばつが悪そうに頭を掻いた。
その代わり、若頭さんが涙が流れ続ける私の頬を撫でた。
「私には、貴女が必要なんですよ、プリンス。私は貴女に救われた、だから、私は何が何でも貴女を幸せにする義務がある」
「でも……」
「あ!!!」
運転手さんが大きな声をあげた。びっくりして涙も止まる。
「なに、仙道ちゃんうるさいんだけど!!」
「ほら、あれ!若、今大旦那様にとやかく言われてて困ってたじゃないですか!」
「あれ?」
「あ……あ~!お見合い!若様、いい加減身を固めろって大旦那様に言われていたやつね」
「ああー……思い出させないでくれよ。それが今何の関係が……」
「王子ちゃんに、『婚約者』のフリしてもらえばいいんすよ!」
「……はい?」
私と若頭さんは、顔を見合わせる。
「もちろん、王子ちゃんには時給も出して……それを借金の返済ってことで」
「それは、一体私は何をしたらいいんでしょうか……?」
「若と寝食共にする」
「は?」
ピキッと私が固まる音が聞こえた気がした。
「え…、え?!」
「王子ちゃんは借金を返せる、若は大旦那様の面倒な話を断ることができて、王子ちゃんと四六時中一緒にいて至近距離で見守ることができる。……一石三鳥ってやつですよ」
「仙道ちゃん、学ないわりに名案思いつくのね……」
「一言多いんだよブス。……若、王子ちゃんの時給どうします?」
「え……えっと……」
若頭さんは、私をじっと見た。値踏みをする目だ。
「5,000円?」
「ミキ、時給5,000円で……ここで暮らす24時間。何日で借金返せる?」
「6,000万÷(5,000円×24時間)=500日ね」
「ごひゃくにちも……!?」
「ここで暮らすだけで返せるんだから、いいだろ?」
「ぐ……」
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