3 そろそろ、学校行きたいんですけど……

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 ……変な夢を見ている気がする。家に、ハゲとガリの借金取りがやってきて、体を取り押さえられてもう無理!と思った瞬間、なんだかかっこいい人が札束で助けてくれて……。助けてくれたその人はヤ●ザのストーカーで、なぜかその人と『時給5,000円の婚約者』として契約を結ぶことになって……。  でも、こんな変なこと、夢だから許されるんだよな。 もしこれが現実だったら、あまりの展開の雑さに怒っていたところだよ……そう考えながらフカフカの布団の中で大きく伸びをして、目を開ける。 そこに広がっていたのは、見たことのない天井だった。 「え?え、ここどこ?!」  思わず飛び起きる。見たことのない布団に、見たことのないパジャマ、見たことのない和室……ないないづくしの部屋の中で、努めて冷静に記憶を遡る。 「……夢じゃなかったんだ」  父親の借金のせいで売られかけたのも、それを橘組の若頭さんに助けてもらったのも……全部、夢じゃなくて現実の出来事だった。私は頭を抱える。枕もとを見ると、だれが用意したのか綺麗にたたまれた服があった。まずは、これに着替えて……それから、どうしようか? --  まだ朝早かったようで、お屋敷の中はシンと静まり返っている。廊下を進んでいくと、おいしそうな匂いが漂ってきた。その出所を探ると、台所に行きついた。 「あら、王子様。おはようございます」  ミキさんがおたまと菜箸を持って、台所に立っている。フリルがたくさんついたエプロンが似合う。 「おはようございます……」 「待っててね、朝ご飯もう少し時間かかるから……」 「あの、私も手伝います」  炊飯器は2台フル稼働、コンロには大きな鍋が乗っていて……お味噌汁のいい匂いが漂ってくる。……とても忙しそうだ。 「え?本当に?」 「はい!……何すればいいですか?」 「じゃあ……私お出汁取ってるから、卵割っててもらっていい?」 「だし巻き卵ですか?わかりました」  ミキさんは大きなボールと、冷蔵庫から取り出した卵を私に渡す。一個ずつ割っていくと、ミキさんは楽しそうに笑った。 「ありがとう~。うち若衆結構いて私一人でおさんどんはきつかったのよね」 「これくらいなら、いつでもしますよ!」 「ごめんね~。やっぱり女手はあるにこしたことはないわね」
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